今回は、「ストリートダンスの原点」と呼ばれることもある、「ソウルダンス」と呼ばれるジャンルについて紹介いたします。
とは言ったものの、ソウルダンスは正確なところ、今まで紹介してきたような1つのダンスジャンルというわけではありません。
しかしソウルダンスはストリートダンスの成り立ちにおいて、非常に重要な歴史的価値を持つダンスです。
今回は、そんなちょっと複雑なソウルダンスと呼ばれるダンスについて、歴史や特徴、音楽を紹介していきます。
この記事を読めば、ストリートダンスの歴史全体に少し詳しくなれると思います。
本サイトのこちらの記事でもソウルダンスについて触れていますので、興味を持った方は参考にしてみてください。
ソウルダンス(SOUL DANCE)とは?
ソウルダンスは、冒頭にもご紹介した通り、「ストリートダンスの原点」として語られることもあるような、非常に古い歴史を持ったダンスです。
しかし正確に言うと1つのダンスジャンルというわけではなく、ソウルミュージックに合わせて踊られるダンスの総称が後にソウルダンスと呼ばれるようになった、という成り立ちがあります。
この様々なダンスの中に、後に多様なジャンルに分岐していくストリートダンスの原型が数多く含まれていたのです。
全体的な傾向として、あまり腕を大きく使うような動きは少なく、ステップが中心となっています。
これは、当時の主なダンスの場がディスコだったため、腕を大きく使うスペースがなかったことに由来するものだと考えられます。
ダンス自体の歴史が古いので、現在ソウルダンサーとして活躍している人の年齢層も比較的高く、服装も典型的なオールドスクールな装いで踊られることが多いため、非常に渋い、クラシカルな魅力を持ったダンスとなっています。
ソウルダンスの歴史
ソウルダンスの誕生=ストリートダンスの誕生、と言っても過言ではない為、ソウルダンスの歴史は非常に古いです。
1950年代から1960年代まで遡ります。
当時アメリカでは、ゴスペルとブルースから生まれた「ソウルミュージック」という音楽が流行っていました。
そんなソウルミュージックを多くの人がディスコに集まって楽しんでいる中で、自然と体を動かして音楽に乗る人が現れ始め、それが次第に流行の技となって人々の間で独自に発展していったのです。
これがソウルダンスの原型となります。
そんな一部で踊られていただけのソウルダンスは、「ソウルトレイン」というテレビ番組をきっかけに、全米中に広がっていくことになります。
ソウルトレインは、1971年に放送を開始したダンス音楽番組です。
1970年代のアメリカでは、公民権運動の影響によって黒人の差別解消を目指す取り組みを行う企業が増えてきており、その中で生まれた番組の1つがこのソウルトレインになります。
そんなソウルトレインは、黒人の音楽であるブラックミュージックに焦点を当てていた為、ソウルミュージック、及びソウルダンスは番組のメインテーマでした。
ソウルトレインが人気を博するに伴って、全米中の若者が番組の真似をしてダンスを始め、各地で独自のダンススタイルが生み出されていきました。
ロックダンスの記事で紹介した「The Lockers」も、ポップダンスの記事で紹介した「ElectricBoogaloos」も、ソウルトレインへの出演をきっかけに有名なり、1つのジャンルを作り上げました。
このように、ソウルダンスはストリートダンス誕生の1つのきっかけであり、ソウルダンスから多様なジャンルのダンスが生み出されていったのです。
ソウルダンスの技術
ソウルダンスの技術は、すなわち全てのストリートダンスのベースとなる技術になります。
複雑なテクニックというよりも、音の乗り方や体の使い方に主眼を置いたテクニックばかりなため、あらゆるジャンルのダンスにそのまま活かすことができます。
アイソレーション
1つ目は、ポップダンスの記事でもご紹介した、体の一部だけを動かすアイソレーションという技術になります。
ポップダンスではカクカクと動かすようなアイソレーションが多いですが、ソウルダンス、及びその他多くのストリートダンスのジャンルでは、滑らかに肩や腰を動かすようなアイソレーションが多用されます。
この後に紹介するステップの中でも頻繁に用いられる技術なので、綺麗なアイソレーションを習得すれば幅広くダンススキルが向上します。
リズムキープ
もはや体の動かす技ではありませんが、正確なリズムキープも綺麗なダンスには必須のテクニックになります。
ダンスシーンではよく早取り、遅取りと呼ばれるのですが、曲のリズムよりも早く、あるいは遅く音を捉えてしまった踊りは、例えどれだけ技自体が綺麗だったとしても、ダンスとしてのレベルは高いとは言えません。
複数人で踊るショーケースでは、リズムを正確にキープできていないと全体の動きからずれて見えますし、バトルにおいてもリズムキープできているかどうかは超重要な評価基準です。
自分のジャンルの音楽を聴きながら、正確にリズムを聞き取って踊れるように普段から意識して練習しましょう。
ソウルダンスのステップ
非常にわかりやすくソウルダンスの代表的なステップを紹介している動画です。
ソウルダンスの技は基本的に複雑なものはないので、見様見真似でやってみることは難しくないでしょう。
しかし動画の方のように綺麗に見せる為には、先ほど紹介したアイソレーションとリズムキープが必須のテクニックになります。
ただ動きを真似するだけではなく、鏡を見ながら綺麗にアイソレーションができているか、正確に曲に合わせて踊れているか、そういった点を重視して練習してみると良いでしょう。
有名なソウルダンサー達
ここまでで紹介してきたように、ソウルダンスというのは明確な一つのジャンルではありませんし、特定の誰かが作り上げたダンスでもないので、ソウルダンスを専門に踊るソウルダンサー、という存在は定義が難しいです。(そもそもソウルダンス自体の線引きが曖昧)
そんな事情はありますが、日本のダンスシーンでソウルダンサーとして認知されている人がいますので、ご紹介いたします。
Teddy dan
「ソウルの神様」と呼ばれる超大御所ダンサーです。
1968年からそのダンスキャリアは始まり、世界規模の大会で優勝したり、テレビ番組に出演したり、ダンスバトルの審査員を務めたり、アーティストのライブに出演したりと、その活躍の幅は多岐に渡ります。
更に、日本でのソウルダンスの歴史、文化、ルーツを後世に伝える為に認定NPO法人「J-Blue Organization」を設立し、団体の理事長を務めています。
色々なジャンルの動きのミックスのような、まさしくソウルダンスと表現できるようなダンスです。
SETO
日本ロックダンス界の伝説的チームである「Be Bop Crew」のメンバーとしてハイレベルなロックダンステクニックを持つ一方で、ソウルダンサーとしても活動しています。
多様なジャンルの経験を持つSETOだからこそできるソウルダンスは別名「SETO STYLE」とも呼ばれており、唯一無二のスタイルとなっています。
ダンスシーンだけでなく、テレビへの出演や、振り付け、MVへの出演など、多くの分野で活躍しているダンサーです。
非常に多様なジャンルの動きが取り入れられていることがわかります。
他に踊ることができる人はいるのでしょうか…。
ソウルダンスのオススメ曲
ソウルダンスと言ったらソウルミュージックです。
ストリートダンスの歴史を象徴するような名曲をご紹介いたします。
Aretha Franklin「Respect」
Cheryl Lynn「Got To Be Real」
KC & The Sunshine Band「That’s the way(I Like It)」
Marvin Gaye & Tammi Terrell「Ain’t No Mountain High Enough」
Bill Withers「Lovely Day」
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、ストリートダンスの原点であるソウルダンスについてご紹介いたしました。
ソウルダンスは特定のジャンルではない為、敢えて練習する機会は余りないかもしれません。
しかしご紹介してきたように、非常に深く、ストリートダンス全体と密接に関係する歴史を持っている為、ソウルミュージックを聞きながらソウルダンスを練習することで、ストリートダンスの歴史、文化を感じることができるでしょう。
また、特定のジャンルではないからこそ、どのジャンルのダンサーにとっても基本となるスキルをたくさん含んでいるダンスです。
既に他のジャンルの経験がある方は、ソウルを練習することでそのジャンルの上達に繋がることでしょう。
ストリートダンスの経験がない方は、ソウルダンスを練習することでストリートダンスの基礎を身に着け、ソウルダンスの練習を通して自分の好みのジャンルを見つけることができるでしょう。
このように、ソウルダンスはどなたにとっても練習する価値のある、魅力的なダンスなのです。
本記事を最後まで読んでくださりありがとうございました。
<参考サイト>
①ソウルダンスってなに!?練習方法や技・ステップまで総合的に解説!
②ストリートダンスの原点!ソウルダンスの基礎知識
③SOUL ソウルダンス
④ソウルダンスの定番練習曲はこれ!ソウルミュージック10選|NOA ONLINE【Dance】