ストリートダンスの中でも比較的新しく、早いテンポの音楽に合わせた軽やかなステップなどが特徴的な「ハウスダンス(HOUSE DANCE)」
今回は、現役のストリートダンサーでハウスダンス(HOUSE DANCE)の経験もある筆者が、ハウスダンスの特徴や歴史からそのスタイルやおすすめコンテンツについてご紹介していきます。
ハウスダンス(HOUSE DANCE)とは?
ハウスダンス(HOUSE DANCE)は、クラブ文化が起源となるストリートダンスの「ニュースクール」に分類されるスタイルの一つで、ハウスミュージック(HOUSE MUSIC)と呼ばれる「4つ打ち」でBPMが120~130前後のクラブミュージックに合わせて踊るダンスのことを指します。
ハウスダンス(HOUSE DANCE)を踊るダンサーのことを一般的にハウスダンサー(HOUSE DANCER)またはハウサー(HOUSER)と呼びます。
曲のBPMが少し高いため、早めのテンポに合わせて繰り出される素早いステップやクラブ文化ならではのノリやフロウ、そして大きく滑らかなフロアワークなどが特徴的なダンスです。
日本のストリートダンサーの中でも広くその名が知られており、特に上半身の使い方については決まった形があまりないため男女問わず様々なオリジナルのスタイルが日々生まれているフリースタイルな一面も持っています。
ハウスダンスの歴史
ハウスダンスの起源は、まずハウスミュージックの誕生から語ることができます。
ハウスミュージックは1970年代~80頃にニューヨークにあった「史上最高のクラブ」とも言われる伝説のクラブ「パラダイス・ガラージ」のDJだった「ラリー・レヴァン(Larry Levan)」がハウスミュージックの基礎となる「NYガラージュ(NY Garage)」というスタイルを生み出しました。
その後、ラリー・レヴァンの友人でDJの「フランキー・ナックルズ(Frankie Knuckles)」がシカゴで「ウェアハウス(The Warehouse)」というクラブをオープンし、彼の独自のミックス手法によって人気を集めた音楽が「ハウスミュージック(HOUSE MUSIC)」です。
DJプレイをするラリー・レヴァン(Larry Levan)
つまり”ウェアハウスのミュージック“として有名になったのがハウスミュージックです。
このハウスミュージックに合わせてクラブで踊られるようになったのが「ハウスダンス(HOUSE DANCE)」で、当時のニューヨークのストリートダンサーたちが、クラブで流れるハウスミュージックに合わせて、ヒップホップ・ブレイクダンス・カポエイラ・サルサなどの様々なジャンルをフリースタイルで踊っていたことからこのハウスダンスが形作られていきました。
ハウスダンスのスタイル
続いて、ハウスダンスのスタイルについていくつかご紹介していきます。
ハウスダンスをあえてスタイルとして分ける必要はないのですが、今回はハウスダンスの基礎知識や大枠を掴んでいただくためにあえてそれぞれのダンスをスタイルとしてご紹介します。
ロフティング(LOFTING)
従来のハウスダンスの基礎とも言えるのがロフティング。
ダウンのリズムに合わせてスムーズにステップやターンをつなげて踊るスタイルで、一般的にハウスダンスと言われてイメージするダンスがこのロフティングということが多い。
上達すればするほど滑らかに様々なステップを繋げることが出来るようになり、ハウスミュージックの4つ打ちに合った流れるようなステップの動きが見ていて気持ちが良い。
ジャッキング(JACKING)
ジャッキングを定義することはとても難しいですが、よく見る動きとして有名なのは、音を区切るようなリズムの取り方でする前ノリや後ろノリです。
ハウスダンスでジャッキングと呼ぶ際は、NYCのHOUSEダンスのオリジネーター集団である「DANCE FUSION」のメンバー、「シャー(Shannon Mabra)」のスタイルであるリズムを切るように強調するノリを指すことが多いです。
日本では多くの人気を集めているスタイルで、日本のハウスダンサーの多くがこのジャッキングを自分のスタイルに取り入れています。
ストンピング(STOMPING)
ストンピングは、床を鳴らすように力強く足を踏んで踊るスタイルで、ダンサーの中には実際に大きな音を立ててステップを踏むダンサーもいます。
ロフティングが滑らかで軽やかなステップをするのに対してジャッキングやストンピングはビートを区切るように刻むという特徴があり、そういったニュアンスが好きなダンサーが積極的に自身のダンスに取り入れています。
フローティング(FLOATING)
ダウンのリズムをあまり大きく見せずに体感や足裏を上手に使って体重移動することで、まるで床の上を滑っているかのように見せる滑らかな動きが特徴のスタイル。
ロフティングと同様にスムーズで滑らかな動きが特徴ですが、こちらは浮遊感と同時に動きに不思議さがあるためアニメーションダンスのスライドなど他のストリートダンスのジャンルとも相性が良いです。
フローティングと聞いて名前がすぐ上がるのが日本人で世界的にも有名なハウスダンサー「HIRO」で、日本では彼の音が立たないステップやフローティングのスキルに憧れてハウスを始めるダンサーが続出しています。
その他のスタイル
ハウスダンスは他のストリートダンスのジャンルと比べてもかなり自由度が高くフリースタイルなジャンルのため、地域によって異なるスタイルが流行したりオリジナルのスタイルがどんどん編み出されています。
例えば、シカゴでは「B-HOUSE(ビーハウス)」と呼ばれるブレイクダンスを取り入れたスタイルが踊られていたり、日本では「代々木系」と呼ばれるスタイルが生まれたりと日々新しいスタイルが生み出されたりしています。
ハウスダンスの服装
ハウスダンスの衣装や服装は基本的には自由で、近年では様々なファッションのハウスダンサーを見かけるので特にこれといった指定はありません。
ハウスダンスを踊るダンサー達は自身のダンススタイルや好きなカルチャー、尊敬するダンサーなどによってファッションが異なり、多くの場合はTシャツやロングシャツ、ジーンズなどの私服に近いような服装が好まれています。
全身お洒落なスーツ姿に落ち着いたハットを被った少しフォーマルなスタイルのダンサーや、ヒップホップカルチャーに近いようなビックシルエットのファッションをするダンサー、アフリカンのような民族衣装を着るダンサーも見られ、その服装の多様性がハウスダンスの自由でフリースタイルな一面を象徴しているように感じます。
有名なハウスダンサー達
海外のハウスダンスチーム
DANCE FUSION
1997年に結成されたニューヨークのダンスチーム「DANCE FUSION」。
オリジナルメンバーの7名は全員が有名な一流ダンサーで、「Caleaf」「Shan.S」「Tony Sekou」「MIKEU4RIA」「Tony Magregor」「Shar」「Marjory」がオリジナルメンバー。
Serial Stepperz
2007年に「Wanted Posse」や「Badland」などの異なるファミリーから集まり結成された、フランスを中心に活動するダンスクルー「Serial Stepperz」。
「Yugson」「Mamson」「Ajs」「Malkom」「Mogwai」「K」「Serge」「Frankwa」「Kapela」など10名以上のメンバーで構成されています。
日本のハウスダンスチーム
ROOTS
1993年頃に結成され、日本のハウスダンスの第一人者と言われている「KOJI」も所属していた伝説のハウスダンスチーム。メンバーは「KOJI」「HyROSSI」「NADA」「KANGO」「SHIMURA」「YAN」「KAIE」「MAR」の8人で構成されていました。
GLASS HOPPER
1997年に徳島のダンサー達によって結成されたHOUSE DANCEチーム「GLASS HOPPER」。現在は「TATSUO」と「ITSUJI」の2人体制となり、日本を代表するハウスダンサーとして全国で活躍しています。
SYMBOL-ISM
東京の代々木を拠点に活動し、独自のダンススタイル「YOYOGI(代々木系)」を生み出した「TAKUYA」の「Suthoom」2人によるダンスデュオ。
2006年に行われた国内最大のストリートダンスコンテスト「JAPAN DANCE DELIGHT 13」にて、ハウスダンスチーム初の優勝という快挙を成し遂げました。
SODEEP
1996年に「Subaru」「Nao」らによって結成されたハウスダンスチームで、途中で「Takesaburo」や「Ohishi」など数名が参加し現在5名のメンバーを軸に活動しています。
チームとメンバー共にアンダーグラウンドシーンや有名アーティストのバックダンサーなどで活躍し、2018年には渋谷でダイニングバー「BAHAMA KITCHEN」をオープンするなど、ダンス以外にも積極的な活動をしているチームです。
PYRO
1997年に「KATSUMI」「TOORU」「KOYA」によって結成された東京都内を拠点に活動するHOUSE DANCE チーム。チーム名は、ニューヨークの伝説的ダンサー「BRIAN Footwork GREEN」によって名付けられたという話は有名です。
ALMA
2001年に結成された「KOJI」」「HyROSSI」「HIRO」「PInO(PInOSHIGe)」によるハウスダンスチーム。日本だけでなく世界でも活躍し、日本のハウスダンスシーンにおいて重要な存在となっています。
Tokyo Foot Workz
「SHUHO」「Takky」「SHIN」「shu_hei」「Toshiya」「Suu」による、名前の通り東京を代表するHOUSEチームで、各メンバーがダンスバトルやレッスンなどで活躍しています。
ハウスダンスをベースに、多彩なFOOTWORKやアクロバティックなフロア、面白いオリジナルの振り付けなどを取り入れたショーケースは数々のコンテストやイベントで話題となりました。
BEAT DOWN BROTHERS
「MAKKI」「SHIGE」「YUU」「NORI」「BOXER」「DAIKI」による6人組ハウスダンスチーム。
既存のハウスダンスに縛られない不思議なダンスと自由なスタイルが特徴的で、2013年の「TOKYO DANCE DELIGHT」で見せたダンスショーケースが話題となりました。
LUCIFER
2008年に「ERIKA」「MOMOCA」「KAZANE」によって結成された女性3人組のハウスダンスチーム。
メンバーはキッズ時代にも多くの実績を残すなど実力派のダンスチームで、「JAPAN DANCE DELIGHT」を始めに数々のコンテストやダンスバトルなどで実績を残しています。
TERM-INAL
「TAIKI」と「Omichi」が、DANCE DELIGHTで優勝するために「HIKARU」「TAIHEI」「Kyo」に声をかけて結成されたハウスダンスチームで、「TOKYO DANCE DELIGHT vol.20」で優勝を果たしました。
現在は「TAIKI」「Omichi」「taihei」「HIKARU」の4人組で、多くのハウスイベントで活動しており若手ダンサーを始め多くのダンサーから支持を集めています。
ハウスダンスのおすすめ動画
ハウスダンス初期の動画
House Old School Dictionary
ハウスダンスの基礎ともなるオールドスクールなステップを紹介している動画で、ハウスダンスをするのであれば必ず参考にしておきたい一本。
「House New School Dictionary」というもう一つの動画もあるのでそちらも必見。
history of house dancing
1991年に公開されたドキュメンタリーがYouTubeで公開されており、ハウスダンスの歴史について振り返りながら古き良きハウスダンサー達のダンスを見ることができる貴重な動画。
若き日のPeekABoo、Link、Stretch、Caleaf、Peter Paul、Ramier、E-Joe、Voo Doo Ray、Marjoryなどの豪華面々が出演しています。
nyc house dancers full quality
NYCハウスダンサー達のサークルセッションのムーヴを見ることができる動画で、NYCハウスダンスの基礎やカルチャーを読み取ることができます。ダンサーの服装やNYCクラブの雰囲気などが見ていて気持ち良いです。
日本のハウスダンス動画
CREW BATTLE TOKYO vs OSAKA HOUSE DANCE CROSSING Vol.1 2012-03-31
現在まで続く全国規模のハウスダンスイベント「HOUSE DANCE CROSSING」、その第一回目として2012年に行われた「HOUSE DANCE CROSSING Vol.1」の東京と大阪のハウスダンサーによるクルーバトルの動画。
TOKYOチームはHIRO・YAN-C・WADOO・NUE・YU-YA・SOICHIRO、大阪チームはYUKIHIKO・PIRO・KAZUKIYO・KO-G・PECO・YUSUKEが出場しました。
HOUSE DANCE CREW ALMA
日本を代表するハウスダンスクルー「ALMA」の少年チャンプルでのショーケース。2000年代のALMAのメンバー(KOJI・HIRYOSSI・PINO・HIRO)のダンスを見ることができます。
【全編公開!VISUAUDIO Series: Step Language = House Dance】
2008年に「HARLEM RECORDINGS」と「INSENSE MUSIC WORKS INC.」によって制作されたダンスDVD「VISUAUDIO Series: Step Language = House Dance」の全てを無料で見ることができるYouTube動画。
登場ダンサーは、Koji・HyROSSI・KANGO・NADA・YAN-C・PINO・HIRO・WaDooを始め、Senba・Hiro・Naoki・Tooru Nitty・Nao・Tatsuo・Soichiroなど日本を代表する一流ハウスダンサーばかり。
ハウスダンスのおすすめ曲
最後にハウスダンスのおすすめミュージックをアーティスト・DJからご紹介していきたいと思います。
同じアーティスト・DJの曲は基本的にどれも似たフィーリングの曲となっていますので、どれか気になる曲があれば是非同じ名前で楽曲検索をしてみてください。
今回ご紹介するのはごく一部なので、是非ご自分で様々なハウスミュージックを調べてみていただきたいです。
Crystal Waters
Kerri Chandler(ケリー・チャンドラー)
Dennis ferrer(デニス・フェラー)
Hardrive
ハウスダンスのおすすめDVD
ダンス・スタイル・ハウス
2009年に発売されたハウスダンスの入門DVDで、「HIRO」「TATSUO」「ITSUJI」「PINO」「KENJI」「SHUHO」などの一流ハウスダンサーのダンスを見ながらハウスダンスの基礎を学ぶことができます。
KINETIC ARTS presents HOUSE DANCE MOVEMENT -On The Groove-
日本を代表するハウスダンサー「KOJI」「KANGO」「HIRO」「PINO」「NAO」「UEMATSU」「YAN-C」「HARUHIKO」の8人によるハウスダンスDVD第2弾。
セッションでのフリースタイルやコンビネーションダンスステップなどを見ることができる他、それぞれのダンサーのインタビューなども収録されている。
VISUAUDIO Series:Step Language=House Dance
2009年に発売された、当時の日本のベテランから若手までのトップハウスダンサーが出演しているハウスダンスDVD。
トップダンサーのダンスをたくさん詰め込んであるため自身のダンスの参考にしたいハウスダンサーや当時のハウスダンスに触れたい方におすすめ。
DANCE SESSION FREESTYLE HOUSE編
全国の勢いのあるストリートダンサー・チームを紹介するダンスDVD「DANCE SESSION」シリーズのHOUSE編。
シリーズのテーマである「FREESTYLE」にスポットを当てながら見ることができるノンストップのダンスミュージックとグラフィックが特徴的です。
【まとめ】ハウスダンスは日々進化している!
いかがでしたでしょうか。今回は、ハウスダンスの特徴やその歴史などについてご紹介しました。
ハウスダンスは比較的新しいジャンルのため他のストリートダンスに比べると世間の認知はまだあまりないかもしれませんが、ストリートダンサー達の中では広く知られておりまた他のジャンルをメインのスタイルとするダンサーが自身のダンスに取り入れたりと今まさに盛り上がりを見せているジャンルの一つと言えます。
特に多彩ステップやハウスミュージックが好まれているため、そこからハウスダンスへと傾向するダンサーも多いので読者の皆さんも是非ハウスダンスに挑戦してみてください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました
【参考文献・書籍・記事】